受験生の子どもにとって、勉強と同じくらい大切なのが体調管理。試験日直前の風邪予防はもちろん、日々の食事で免疫力を高めてウイルスに負けない体づくりをしておくことも重要になります。子どもの免疫力を高めるために親が覚えておきたいテクニックを管理栄養士の豊永彩子さんに伺いました。
子どもの免疫低下のサインを見逃さないのが親の役割
そもそも免疫とは、病原菌などから身体を守り、健康を維持するための自己防衛システムのこと。この防護する力=“免疫力”が高いと風邪や感染症などにかかりにくくなる一方で、身体や心が疲れて免疫力が低下してしまうと、肌が荒れたり、湿疹が出たり、目が充血したりといった症状が現れます。
免疫力の鍵を握るのが腸。腸には体内の免疫細胞の6〜7割が存在しているといわれているので、腸内環境を高めることが免疫力アップには欠かせません。
子どもに免疫力低下のサインが現れたら、親はそれを見逃さずに、しっかりとケアをしてあげましょう。
「特に受験期の子どもを持つママは、発熱など風邪の諸症状だけでなく、子どものこういった小さなサインも『疲れているのかな?』と症状が悪化する前にキャッチしてあげてください。子どもによっては、自分の体調不良をうまく言葉にできないこともありますので、しっかりと観察したり、コミュニケーションを取ったりといったことも重要になるでしょう」(豊永さん)
免疫力アップには腸内環境を意識した生活を
では、日ごろの生活で免疫力を高めるためには、どのようなことをするとよいのでしょうか。豊永さんによると、家庭でできることには、以下のようなものが挙げられるのだと言います。
- うがい、手洗い
- 規則正しい生活
- 十分な睡眠
- 栄養バランスのよい食事を1日3回摂る
※ 補食(おやつ)タイムも栄養チャージのチャンスです - 運動
- 日光を浴びる
「免疫力を高めるためには、まず帰ってきたらうがい、手洗いをし、規則正しい生活で体調を整えておくことが大切。そして、食事は栄養バランスに気をつけ、朝、昼、晩の3食をしっかり摂りましょう。特に朝ごはんを抜いてしまうと便秘になりやすく、腸内環境が乱れる要因にもなります」(豊永さん)
豊永さんによると、免疫力の高い身体をつくるためには外での運動も大切とのこと。
「成長期の子どもは十分な栄養とともに、運動によって骨や筋肉をしっかり使い、強化して強い身体をつくっていくことが重要。骨の生成に欠かせないカルシウムの利用効率を高めるために、日光を浴びてビタミンDを生成することもポイントです。ビタミンDには免疫を調節する働きがあり、風邪やインフルエンザ、気管支炎や肺炎といった感染症の予防に効果があるといわれているので、外で身体を動かす機会は免疫力アップに欠かせません」(豊永さん)
ビタミンA・C・Dと発酵食品は免疫力アップに貢献
免疫力は食事によって高めることができます。以下の栄養素を摂取するとよいとされているので、普段の食事に取り入れてみましょう。
ビタミンD
体内に侵入したウイルスや細菌などに対して、免疫反応が過剰に起こることを抑制し、必要な免疫機能の活動を促す「免疫機能を調節する働き」をもつ栄養素です。
<多く含む食品>
干ししいたけやきくらげ、鮭、イワシなどの魚類、卵黄など
ビタミンA
体内にウイルスを侵入させないためには、のどや鼻腔の粘膜を強化することが大切。ビタミンAには、のどや鼻腔の粘膜を保護し、免疫細胞の働きを活発にする働きがあります。
<多く含む食品>
レバー、うなぎ、緑黄色野菜、玉子、チーズ、牛乳、海苔など
ビタミンC
不足するとウイルスに対する抵抗力が低下します。またビタミンCは寒さや疲労、発熱などのストレスで消耗されるので、積極的に摂取するようにしましょう。
<多く含む食品>
野菜(赤ピーマン、ブロッコリーなど)、果物(キウイ、レモンなど)、イモ類(じゃがいも、さつまいもなど)など
炭水化物(糖質)、食物繊維
免疫機能を高める腸内細菌のエネルギー源となる栄養素です。腸内細菌のエサとなる炭水化物と食物繊維を組み合わせて摂取すると、おなかの中によい菌を増やすことにつながるため、より効果的に免疫力を高められることになります。
<炭水化物(糖質)を多く含む食品>
ご飯、パン、麺類、イモ類など
<食物繊維を多く含む食品>
海藻(ひじき、わかめなど)、豆類(いんげん、あずきなど)、野菜(切干だいこん、ごぼう、モロヘイヤなど)、きのこ類(きくらげ、干ししいたけなど)、果物(アボガド、干し柿など)
ちなみに、豊永さんによると、よい菌が増えたときに、それを育てるのが「発酵食品」で、「お味噌汁やヨーグルト、納豆などを摂取することで、腸内環境を整えながら免疫力を高めて病気を予防する効果が期待できる」のだそう。
受験半年前の秋ごろから、免疫力アップメニューを意識
受験生にとって本番は冬。ではいつごろから、受験を意識した食生活を始めるとよいのでしょうか?
「暑い季節は、食欲が落ちてしまう時期でもあるので、免疫力アップよりもこまめに食事をとって必要なエネルギー量を補うことが大切です。暑さが落ち着く9月以降は‶食欲の秋″でもあり、おいしい食べ物が増えるタイミング。このくらいの時期から意識して、免疫力を高める食習慣を身につけていくとよいと言えます」(豊永さん)
受験生にはきちんとした朝ごはんも重要
受験前に限ったことではありませんが、「免疫力アップのためには、朝からしっかり食べることも重要」と豊永さん。
「おなかがすいていないからと、パンだけ、おにぎりだけといった朝ごはんはNG。主食と主菜のそろった朝食をしっかり噛むことで熱を生み出し、体が温まっていくため、朝ごはんはとても重要な要素なんです。試験の前や当日の食事は、しっかり噛むことを忘れないようにしましょう」(豊永さん)
直前の集中力ダウンを防ぐ亜鉛や鉄
あさりや牛の赤身などに多く含まれる亜鉛や鉄は、集中力の低下を防ぐ効果もあります。
「試験前の緊張状態では、内臓が動きにくくなるので、玄米よりは白米、うどんやお餅など、できるだけ消化によいものを選んであげるのが理想的。例えば赤身肉は、柔らかく煮込んであげるなど工夫を施してみましょう」(豊永さん)
フルーツは季節のものをチョイス
風邪予防に効果的なビタミンCを含むフルーツは、季節の旬のものを選べば間違いありません。受験期の冬なら、みかん、りんご、いちごなどです。ビタミンCは体内に2時間ほどしかとどまっていられないため、朝にまとめて食べるのではなく、おやつなどを利用して、1日のなかでこまめに取ることを心がけましょう
「特に疲れているときは、意識的にビタミンCの補給を。勉強の合間にお湯にレモン汁とオリゴ糖(またははちみつ)を加えたホットレモンを飲むのもおすすめです」(豊永さん)
大切な受験の日に体調不良を起こしてしまうと、これまでの努力が水の泡。そうならないために、親にも勉強が必要です。できるかぎりのサポート体制を整えましょう!
管理栄養士。米国NIT認定栄養コンサルタント、食行動コンサルタント、味覚カウンセラー。食行動改善カルテを使った個別カウンセリング・コンサルティング、セミナーなどを通して300名以上をサポート。その他、各メディアで連載やコラム執筆なども多数手がけ、健やかな美と健康の情報を発信している。
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